カルレッツ® パーフロロエラストマーは、米国デュポン社が開発したエラストマー材料。フッ素樹脂テフロン® のもつ優れた耐薬品性、汎用のフッ素ゴムを上回る耐熱性を有しています。
カルレッツ® はデュポン エラストマー社の商標です。
カルレッツとは
カルレッツは、パーフロロエラストマーと分類される高分子材料で、フッ素樹脂、フッ素ゴムともに、優れた耐熱、耐薬品特性をもつことで知られています。カルレッツと、同じフッ素系高分子に属するフッ素系樹脂(プラスチック)であるテフロン(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)、フッ素ゴム(エラストマー)の化学構造式を示しました。
カルレッツの構造は、エラストマーの特徴である主鎖部:TFE(テトラフルオロエチレン)、枝分れ部:PMVE(パーフロロメチルビニルエーテル)、および架橋部から成り、完全にフッ素化されており、テフロンと極めて似た構造をしています。一方、フッ素ゴムは、主鎖部の一部に、炭素ー水素結合が存在しており、この結合は、炭素ーフッ素結合より弱いために、カルレッツと比較して熱的、化学的特性が低くなります。
カルレッツの特徴
カルレッツパーフロロエラストマーは、米国デュポン社が開発した新しいエラストマー材料です。この、エラストマー材料は、テフロンフッ素樹脂のもつ優れた耐薬品性、従来のフッ素ゴムを上回る耐熱性を有し、さらにゴムの持つ弾力性を兼ね備えた画期的な製品です。その耐薬品性は、従来のフッ素ゴムでは使用が難しかったエーテル類、アミン類、ケトン類、酸化剤、有機溶剤、燃料、酸、アルカリなど、ほとんどの薬品に対して安定性を示し、耐熱性(JISK6301などの圧縮永久ひずみ試験の結果に基づく)においては、300℃近くの高温においてもゴムとしての物性を比較的保ちます。このため、例えばカルレッツ部品を半導体製造装置用シール材に用いた場合では、
等が期待できます。
カルレッツ® の優れた耐熱性、優れた耐薬品性
カルレッツ4079,7075UP,8002
4079 | 硬さ(ショアA) | 75 | 7075 | 硬さ(ショアA) | 75 | 8002 | 硬さ(ショアA) | 69 |
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耐熱目安(℃) | 316 | 耐熱目安(℃) | 327 | 耐熱目安(℃) | 275 | |||
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強酸、有機酸を含む一般耐薬品性に優れたカルレッツの標準材料。高温使用時における圧縮永久歪がすぐれる。アミン類には要注意。熱サイクルでの使用は280℃が望ましい。 | 耐熱性、低放出ガス特性にすぐれた黒のカルレッツ材質。高温プロセスでのシール性、機械特性も優れている。7075の詳細 | 充填材を一切含まず、プラズマ照射時にパーティクルの発生がほとんど無い材質。耐熱性にも優れている。あらゆる種類のプラズマに対して、耐プラズマ性および、耐熱性に優れた材質。8002の詳細 |
カルレッツ1050LF,6375UP,8475
1050 LF |
硬さ(ショアA) | 82 | 6375 UP |
硬さ(ショアA) | 75 | 8475 | 硬さ(ショアA) | 72 |
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耐熱目安(℃) | 288 | 耐熱目安(℃) | 275 | 耐熱目安(℃) | 300 | |||
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アミン類に対して最適の材質で一般的な耐薬品性に優れている。200℃以上の熱水/水蒸気の雰囲気には注意。高温時の放出ガスが最も少ない。 | 幅広い腐食性流体に対して耐薬品性が優れた材質。抽出物が非常に少なく、ウェット用途に適している。6375UPの詳細 | 耐熱性、低放出ガス特性に優れた材質。拡散炉、LD-CVD等の耐熱用途に実績がある。8475の詳細 |
カルレッツ8575,9100,8085
8575 | 硬さ(ショアA) | 74 | 9100 | 硬さ(ショアA) | 74 | 8085 | 硬さ(ショアA) | 82 |
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耐熱目安(℃) | 280 | 耐熱目安(℃) | 300 | 耐熱目安(℃) | 240 | |||
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耐プラズマ性に優れており、カルレッツ白色材質の中でプラズマエッチング等に最も実績がある材質。8575の詳細 | フッ素系・酸素系プラズマ両者の耐プラズマ性能を保有し、非常に優れた低パーティクル・放出ガス特性をもっている。固定部・稼働部に関わらず、優れた機械特性とシール性能を示す。9100の詳細 | HDPCVD、PECVDのアプリケーション用に開発されたカルレッツ材質。特にNF3プラズマの環境下でのパーティクルを低減できる材質。機械特性に優れているため、スリットバルブ、ゲートバルブ等にも最適。8085の詳細 |
カルレッツ6190,6230,6221,6885,6880,8002,4001,6236
6190 | 硬さ(シェアA) | 73 | 成形性に優れた材質。 量産対応グレード |
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耐熱目安(℃) | 300 | ||
6230 | 硬さ(シェアA) | 75 | 米国食品衛生法認証グレード FDA認証グレード |
耐熱目安(℃) | 260 | ||
6221 | 硬さ(シェアA) | 70 | 米国食品衛生法認証グレード FDA認証グレード |
耐熱目安(℃) | 260 | ||
6885 | 硬さ(シェアA) | 75 | 特にエーテル類、エステル類、ケトン類、及びアルコール類に 優れた耐薬品性。 ペイント業界向けグレード |
耐熱目安(℃) | 270 | ||
6880 | 硬さ(シェアA) | 70 | 特にエーテル類、エステル類、ケトン類、及びアルコール類に 優れた耐薬品性。 ペイント業界向けグレード |
耐熱目安(℃) | 250 | ||
8002 | 硬さ(シェアA) | 69 | 充填材を一切含まず、プラズマ照射時にパーティクルの発生が ほとんどない材質。 耐熱性にも優れている。 あらゆる種類のプラズマに対して、耐プラズマ性および、 耐熱性に優れた材質。ニュークリアカルレッツ |
耐熱目安(℃) | 250 | ||
4001 | 硬さ(シェアA) | 56 | 充填材を含んでいない材質であり、硬度が最も低く、 オゾンなど酸化性雰囲気に対しての最適材質 |
耐熱目安(℃) | 270 | ||
6236 | 硬さ(シェアA) | 90 | 食品・飲料・医薬品業界向け ヘルールガスケット用グレード |
耐熱目安(℃) | 250 |
カルレッツの物理的特性4079,7075,6375,1050LF,6190,6230,6221,6885
/ | 4079 | 7075 | 6375 | 1050LF | 6190 | 6230 | 6221 | 6885 | |
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引張強さ* | Mpa | 16.9 | 17.9 | 15.1 | 18.6 | 20.8 | 16.5 | 15.2 | 17.9 |
kgf/c㎡ | 172 | 183 | 154 | 189 | 212 | 168 | 155 | 183 | |
100%モジュラス* | MPa | 7.3 | 7.6 | 7.2 | 12.4 | 6.4 | 7.0 | 7.2 | 6.9 |
kgf/c㎡ | 74 | 77.5 | 73.4 | 127 | 65.3 | 71.4 | 73.5 | 70.4 | |
破断時の伸び | (%) | 150 | 160 | 160 | 125 | 234 | 170 | 150 | 160 |
硬度 デュローメーター | A±5 | 75 | 75 | 75 | 82 | 73 | 75 | 70 | 75 |
圧縮永久歪み(%)** | 常温で70時間 | 22 | / | 30 | 30 | / | / | / | / |
204℃で70時間 | 25 | 15 | / | 35 | 20 | 18*H | 20*H | 16*F |
カルレッツの物理的特性6880,8002,8475,8575,8085,4001,6236
/ | 6880 | 8002 | 8475 | 8575 | 8085 | 4001 | 6236 | |
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引張強さ* | Mpa | 11.7 | 16.0*A | 14.4 | 12 | 16.3 | 9.1 | 21.5 |
kgf/c㎡ | 119 | 163 | 147 | 122 | / | 92 | 219 | |
100%モジュラス* | MPa | 2.5 | 2.9*B | 2.2 | 2.5 | 7.5 | 1.5 | 17.8 |
kgf/c㎡ | 25.5 | 29.6 | 22.4 | 25.5 | / | 15 | 182 | |
破断時の伸び | (%) | 215 | 246 | 227 | 230*D | 159 | 235 | 142 |
硬度 デュローメーター | A±5 | 70 | 69*B | 72*C | 74C | 82 | 56 | 90 |
圧縮永久歪み(%)** | 常温で70時間 | / | 15*C | 23*C | 16 | 42 | / | 35*E |
204℃で70時間 | 20*F | / | / | / | / | 18 | / |
*ASTM D412,500mm/min. **ASTM D395B pellets *A:JIS625ダンベルテスト
*B:JIS6253のスラブによるテスト *C:AS-214 Oリング
*D:ASTM D412ダンベル202/m2
*E:200℃×22時間 *F:ASTM D395D,o-rings *G:160℃×70時間
*H::ASTM D395D,o-rings160℃×70時間
比重 | 1.9~2.0 | 熱伝導率 | 50℃ 0.19W/m・k | |
摩擦係数 カルレッツ対スチ-ル |
0.25~0.60 (グレ-ドで異なる) |
100℃ 0.19W/m・k | ||
200℃ 0.19W/m・k | ||||
300℃ 0.19W/m・k | ||||
線膨張係数(25~250℃) |
2.3~3.6×10~4/℃ | 電気特性 | 誘電率 | 1000Hz 4.9 |
比熱 | 50℃ 0.226cal/g | 誘電正接 |
1000Hz5×10~3 | |
100℃ 0.233cal/g | 体積抵抗率 |
約1014~1017Ω・cm | ||
150℃ 0.252cal/g | 耐電圧 |
17.7kv/mm以上 |
カルレッツ使用上の注意点:高温・高圧下の熱水・スチームに対してご使用の際は、必ずカルレッツ販売店までお問い合わせ下さい。
熱膨張の注意点:カルレッツを高温使用される場合、熱膨張による体積増加を十分ご考慮下さい。
カルレッツの各種特性
カルレッツの耐熱特性 カルレッツの圧縮永久歪み カルレッツのガス透過性 カルレッツの放出ガス性 カルレッツの耐プラズマ特性 カルレッツの抽出物特性、メタル含有について カルレッツの耐スチーム特性 カルレッツの耐薬品特性カルレッツ製品の使用および廃棄に関して、上記の情報は何ら保証をなすものではありません。また責を負うものではありません。使用に際しては,個々の用途に対して,使用の前に,独自に機能テストを行なうようにおすすめします。エラストマー製の部品は,どれをとっても永久に使用できるものではありません。したがってカルレッツ製の部品といえども重大な応用分野で使用する場合は,定期的な点検と交換を忘れないよう,十分にお気をつけください。