ゴムの耐熱性については、下記の3つの点に分けて考えられます。
ゴムの耐熱性は、基本的に分子構造に左右されます。ゴム分子主鎖と架橋(加硫)部分の切断による熱劣化現象が主です。主鎖に二重結合を含むジエン系ゴムは、耐熱性がなく、二重結合が少ないかあるいは、含まないゴムは、耐熱性が優れています。また、同じゴムの種類でも、配合によっても変わります。たとえば、加硫系では、硫黄加硫は、無硫黄加硫よりも耐熱性が劣ります。
ゴムは、常温においては、弾性に富んだ物性を持っていますが、低温になると次第に硬くなります。
ゴムの耐寒性と言う場合、ゴムの硬化、つまりゴムとしての一番の役割の弾性がなくなることですが、下記の3つの点に分けて考えられます。
ゴムは、一般にガラス転移点(Tg)以下では、ガラス状になりゴムとしての機能を失います。ガラス転移点の低いシリコーンゴムやBRは、耐寒性に優れています。また、耐寒性は、ゴム分子の柔軟性(ゴム分子が低温領域でどれだけ自由に動けるかどうか)によって決まってきます。分子間の凝集力が強い場合(極性が大きい)ゴム分子の運動性が悪く柔軟性が損なわれます。
おなじNBRでも、アクリルニトリル含有量が高いNBRほど、耐油性はありますが、耐寒性は劣ります。
極性とガラス転移点(Tg)で計れないもの
分子に分岐などがあると、分子が動きにくいため柔軟性が劣ります。IIRは、メチル基がたくさんあるので分子が動きにくく、SP値のわりには、Tgが高くなっています。
IIRと反対に分子の側鎖をもたないBRは、分子が動きやすいので、SP値のわりにTgが低くなっています。
結晶性のあるCRやNRは、低温下では、Tgのわりに柔軟性がありません。
ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、その他。
ゴムの種類 | 略号 | 耐熱限界温度 ℃ |
耐熱安全温度 ℃ |
耐寒限界温度 ℃ |
---|---|---|---|---|
ニトリルゴム | NBR | 120 | 80 | -50 |
水素化ニトリルゴム | HNBR | 140 | 110 | -30 |
フッ素ゴム | FKM | 230 | 200 | -15 |
シリコーンゴム | VMQ | 230 | 180 | -50 |
エチレンプロピレンゴム | EPDM | 140 | 120 | -40 |
クロロプレンゴム | CR | 110 | 70 | -40 |
アクリルゴム | ACM | 160 | 140 | -20 |
ブチルゴム | IIR | 140 | 110 | -40 |
ウレタンゴム | U | 100 | 70 | -30 |
クロロスルフォン化ポリエチレンゴム | CSM | 130 | 100 | -30 |
エピクロルヒドリンゴム | CO,ECO | 130 | 100 | -30 |
天然ゴム | NR | 80 | 65 | -50 |
フッ素樹脂(参考) | PTFE | 260 | 250 | -100 |
(注意)この特性一覧表は、あくまで目安としての参考値ですので保証するものではありません。
実際のご使用は、試験片などによる実用試験でご確認の上ご使用ください。