ゴムの耐油性は、配合や加硫状態(架橋密度)にも関係しますが、基本的には、原材料のゴムに関係します。耐油性は、ゴムがその油に対しての膨潤や、収縮の度合いそしてゴム強度の低下などによって判断されます。また、ゴムが膨潤すると言うことは、ゴムの分子間に油が入り込む現象で、油がゴムと混ざりやすければ膨潤し、混ざり難ければ膨潤し難いという事になります。そこで極性の異なる物質は、お互いに混ざりにくいという事から、ゴムの極性を表すSP値(溶解度パラメーター)を用いて、膨潤性を推測します。ガソリンや潤滑油など鉱物油は、非極性油で、ブレーキオイルなどは、極性油です。代表的耐油性ゴムであるNBRは、極性があるので、鉱物油には、耐性を示しますが、ブレーキオイルなどには、膨潤します。このような場合は、極性の小さいSBRのようなゴムが使用されます。ただしSP値は、例外も多く、例えば、フッ素ゴムのようにSP値が小さくても耐油性が大きいことなどあり、実際にゴム製品を使用する場合は、一つの目安程度と考えるほうが良いでしょう。実用試験などで検証した上で、ゴム製品を使用するのが安全です。
ゴム、樹脂、ポリマー、SP値
ポリマー | 溶剤 | ||
---|---|---|---|
テフロン、フッ素樹脂(PTFE) | 6.2 | n-ペンタン | 7.0 |
フッ素ゴム(FKM,FPM) | 7.3 | ガソリン | 7.0 |
シリコーンゴム(MQ) | 7.3~7.6 | n-ヘキサン | 7.3 |
ポリイソブチレン | 7.1~8.3 | ジエチルエーテル | 7.4 |
ブチルゴム(IIR) | 7.7~8.1 | n-オクタン | 7.6 |
エチレンプロピレンゴム(EPM) | 8.0 | 塩化ビニルモノマー | 7.8 |
ポリエチレン | 7.7~8.4 | シクロヘキサン | 8.2 |
クロロスルホン化ポリエチレン(CSM) | 8.1~9.8 | 酢酸イソブチル | 8.3 |
天然ゴム(NR) | 7.9~8.4 | 酢酸イソプロピル | 8.4 |
イソプレンゴム(IR) | 8.13 | メチルイソプロピルケトン | 8.5 |
ブタジエンゴム(BR) | 8.1~8.6 | 酢酸ブチル | 8.5 |
スチレンブタジエンゴム(SBR) (ブタジエン/スチレン) |
四塩化炭素 | 8.6 | |
メチルプロピルケトン | 8.7 | ||
SBR(85/15) | 8.4~8.6 | エチルベンゼン | 8.8 |
SBR(75/25) | 8.1~8.6 | キシレン | 8.8 |
SBR(60/40) | 8.6~8.7 | トルエン | 8.9 |
ポリスチレン | 8.5~10.3 | 酢酸エチル | 9.1 |
石油炭化水素樹脂 | 8.3 | テトラヒドロフラン | 9.1 |
クロロプレンゴム(CR) | 8.1~9.4 | ベンゼン | 9.2 |
ニトリルゴム(NBR) (ブタジエン/アクリロニトリル) |
トリクロロエチル | 9.2 | |
メチルエチルケトン | 9.3 | ||
低NBR(82/18) | 8.7~8.8 | クロロホルム | 9.3 |
中NBR(75/25) | 8.9~9.5 | 塩化メチレン | 9.7 |
中~中高NBR(70/30) | 9.4~9.9 | アセトン | 9.9 |
高NBR(61/39) | 10.3~10.5 | 二硫化炭素 | 10.0 |
ポリメタクリル酸メチル | 9.1~9.5 | 酢酸 | 10.1 |
多硫化ゴム(T) | 9.0~9.4 | ピリジン | 10.7 |
塩化ゴム | 9.4 | n-ヘキサノール | 10.7 |
ポリ酢酸ビニル | 9.4~9.6 | シクロヘキサノール | 11.4 |
アクリルゴム(ACM) | 9.5 | n-ブタノール | 11.4 |
ポリ塩化ビニル(PVC) | 9.4~10.8 | イソプロピルアルコール | 11.5 |
ウレタンゴム(U) | 10.0 | ジメチルホルムアミド | 12.0 |
ポリエチレンテレフタレート(PET) | 10.7 | ニトロメタン | 12.7 |
エポキシ樹脂 | 10.9 | エタノール | 12.7 |
フェノール樹脂 | 11.3 | メタノール | 14.5 |
ポリ塩化ビニリデン | 12.2 | エチレングリコール | 14.6 |
ポリビニルアルコール | 12.6 | グリセロール | 16.5 |
ポリアミド(66-ナイロン) | 13.6 | ホルムアミド | 19.2 |
セルロース | 15.7 | 水 | 23.4 |