オイルシール装着部の軸
機械設計上使用される機械構造用炭素鋼、又は、低合金鋼などのほかに、鋳鉄、樹脂などが使用されています。ただし、鋳鉄は、軸表面にピンホールがつきやすく、それがもとでオイルシールのリップを劣化させる原因となり、樹脂についても、適正な軸の硬さや粗さを確保しにくく、さらに熱伝導係数が小さく放熱が悪いといった問題点がありますので、鋳鉄と樹脂は使用上の注意が必要となります。また、セラミックス軸が化学装置に使用されることがありますが、表面の特有の粗さが、リップの摩耗を促進させることがありますので使用はしないほうが良いとされています。
オイルシールのリップが接触する軸の表面は、一般にHRC30以上の硬さ(特殊な場合を除く)が推奨されます。それは、①軸表面に打ちキズが付きにくい。②オイルシールに適した表面粗さが、加工上、容易に得られやすい。③軸に変形が生じにくい。などの理由によります。リップが樹脂(フッ素樹脂など)の場合は、HRC40~50の硬さの軸では、摩耗させてしまいます。HRC50~60程度の硬さが必要です。
オイルシールのリップが接触する軸の表面の粗さは、大きすぎても小さすぎても漏れや摩耗の要因になります。表面は、きずや機械加工のリードなどなきように、一般には送りをかけない、グラインダー仕上げが加工法としては適切です。軸の表面粗さは、Rmax0.8~2.5μmかつRa0.2~0.63a程度が必要です。ただし表面粗さがその範囲内にあっても軸の加工痕に方向性があると、漏れの原因になります。
軸にオイルシールを挿入する場合、軸端が鋭い角がついているとオイルシールのリップを傷つけ漏れの原因になったり、その角にリップを引っ掛けばねが外れたりすることがありますので、軸端には適度な面取りを施す必要があります。
軸径d | 面取り d-d1 |
軸径d | 面取り d-d1 |
||
を超え | 以下 | を超え | 以下 | ||
- | 10 | 1.5 | 240 | 300 | 11.0 |
10 | 20 | 2.0 | 300 | 400 | 12 |
20 | 30 | 2.5 | 400 | 500 | 12 |
30 | 40 | 3.0 | 500 | 630 | 14 |
40 | 50 | 3.5 | 630 | 800 | 14 |
50 | 70 | 4.0 | 800 | 1000 | 18 |
70 | 95 | 4.5 | 1000 | 1250 | 18 |
95 | 130 | 5.5 | 1250 | 1600 | 20 |
130 | 240 | 7.0 | 1600 | 2000 | 20 |